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オンナごころと少年と(1)
作:桃沢りく
1
「すみませんでした。わざわざ一緒にきてもらって」
「すみません。じゃなくて、ほかの言い方、あるでしょう?」
「……ありがとう?」
「ピンポーン!」
僕の前を歩く祥子さんは、花模様のスカートの裾を翻してふわりと舞った。
「あ、危ないですよ。そこ、車道です」
「なあに? 大丈夫よ。ここは車なんてめったに通らないんだから」
めったに通らないからこそ、危ないんじゃないのかなあ。
そんな、心配症の僕の予感は、たいてい当たってしまうんだ。
「祥子さん、危ない!」
「きゃあ!」
腕を掴まえた祥子さんのスカートをかすめて、一台の外車が通り過ぎていった。
「だから、言ったじゃないで、すか……」
歩道と車道の中間で、僕は祥子さんを抱きしめていた。
柔らかくて弾力があって、いい匂いがする祥子さんの身体が僕の腕のなかにある。
「……ごめんなさい」
祥子さんの吐く息がシャツを通して僕の胸を熱くする。
「ごめんなさい。じゃなくて、ほかの言い方があるんじゃないんですか?」
「ありがと」
ふざけたつもりの僕のセリフに、素直に『ありがとう』と言える祥子さんはオトナだ。
いとこの和之兄さんに勉強を教わっている僕は、週に3回祥子さんと会う。
祥子さんは、和之兄さんの奥さんだから。
勉強のあとで毎回ごちそうになる祥子さんの手料理は、週に2回はめちゃくちゃ美味しくて、1回はとんでもなくマズイ。
見たこともない野菜を使った、食べたことのない味の料理。
和之兄さんが『祥子の料理はロシアンルーレットみたいだ』と言い。
僕が『ロシアンルーレットなら、外れは6分の1で済むのにね』と言う。
こんな楽しい日々も受験が終われば、それまでだ。
大学生になったら彼女を作って楽しく過ごそう。そう思っていたのはいつまでだったかな。
祥子さんのような人は、きっとほかにはいない。
だから僕が、楽しく過ごせる時間は、あとわずかなんだ。
「ねえ、あっち行ってみよう!」
「駅から遠くなっちゃうんじゃないですか?」
「いいから、行こう!」
祥子さんに手を引かれて長い坂を登る。
振り返ると、僕たちの後ろには、手を繋いだふたりの影が長く伸びていた。
「あったあった、ここよ」
この公園を目指してたのか。
僕の手を引いて、ずんずん歩いていく祥子さんが、ひとつのベンチの前で立ち止まる。
「あっち、向いて」
「はい」
「なにが見える?」
「空……?」
「もっと、下よ」
「……海……港が、見える」
「ふう……」
ため息をついた祥子さんが、僕の手をようやく離した。
そうだった。さっきからずうっと祥子さんに手を握られていたのに、僕はあんまりなにも感じていなかったんだ。
離れて初めて、祥子さんの手のぬくもりを意識する。
「願書をもらった帰りに、ここから夕陽をみると絶対合格するんだからね」
額に汗を浮かべて、輝く祥子さんの笑顔。
そうだったのか。だからわざわざ一緒にきてくれたんだ。
「わたしの顔を見ちゃダメッ!」
「はあ……」
「太陽を見てるのよ。最初から最後まで、海にすっかり沈んでしまうまで、ずうっと見てるの。一度だって目を離したら、ダメなの。いーい、わかった?」
「わかったよ。祥子さん」
オレンジ色した太陽の下端が海に触れて、水平線がにじんで見える。
ゆっくり、ゆっくり、海のなかに潜ってゆく。
わずかに残った上端が、最後の輝きを地上に放ってから、海に沈んだ。
横に立った祥子さんに視線を戻すと、まだオレンジ色に染まった顔に影がさしてきて、みるみるうちに暗くなる。
帰りましょう、と言うかわりに、僕は唾をごくんと呑み込んだ。
「少し、座ろうか」
祥子さんの言葉が、甘いトゲのように僕の胸を刺した。
好きな女性と、暗くなった公園のベンチに並んで座っていて、平静でいられる男なんているわけがない。
そうなんだ。僕は祥子さんのことが好きだ。
和之兄さんから、婚約者だと紹介されたあのときから、僕はずっと祥子さんを好きだったんだ。
「ねえ、気がついた?」
笑いを含んだ祥子さんの声が、耳のすぐそばで聞こえる。
囁くような押さえた声は、いつもの大らかな祥子さんとは別人のように秘密めいている。
急速に暗くなった公園内を見回した僕は、祥子さんの言葉の意味を理解した。
たいして広くもない公園は、がらんとした広場のようになっていて、子供が遊ぶ遊具などもない。
古ぼけた木のベンチが置かれているだけだった。
広場の中心を向いて置かれたいくつものベンチは、等間隔を保って円を描いている。
その、どれにも、漏れなくカップルが座っていたんだ。
男は女の肩を抱き、腰に手を回すか腿に置くかしている。
顔を寄せ合うカップル、キスを交わすカップル、服の上から女の胸を掴む男の手。
ミニスカートのなかに手を入れる男、のけぞる女。
男の股間に顔をうずめている女……。
見ていられなくなって目をそらすと、祥子さんと目が合ってしまう。
「うふふ……純情な少年には、刺激が強すぎたかなあ?」
からかいの色を祥子さんの瞳のなかに感じた僕は、カアッと身体が熱くなる。
悔しい。祥子さんに子供あつかいされていることが悔しい。
「キスだけなら、してあげてもいいよ」
驚いて固まっている僕に、祥子さんの顔が近づいてきて、あっというまに唇が僕の唇に触れた。
目を閉じた祥子さんの顔が近すぎて、僕の両目は焦点を結べない。
すぐに離れてしまった祥子さんの顔が、まだ目の前にあった。
「ねえ、初めてなの? キス……」
こんな表情の祥子さんをみるのは初めてだった。
週に3回、会っていても、こんな……。
僕の頭にその言葉が浮かんだ。
みだら……。淫らな顔をした祥子さん。僕にキスをした祥子さんが、目の前にいた。
祥子さんの唇めざして顔を近づける。
口紅をつけているのかいないのか判然としない祥子さんの自然な色の唇。
誰かの唇をこんなに近くでみるのは初めてだ。
柔らかくて、ほんのり温かかった唇に、もう一度触れる。
アイドルタレントや、クラスの女子を相手に頭のなかでシュミレーションしていたキスを、祥子さんとしてる。
もっと深く唇を重ねあい、相手の口のなかに舌を入れてからめあったりするディープキスも、僕はシュミーレションしたことがある。
思い出すと同時に、それを実行していた。
腕を掴むと、祥子さんの身体がビクッと反応する。
オトナの男になったつもりで、祥子さんの身体を抱き寄せる。
シュミレーションどおりに、自然な感じに祥子さんが僕に抱き寄せられてくれる。
遠慮を知らない僕の舌が、祥子さんの唇のすきまからなかに入り込む。
舌と舌が触れ合った瞬間、僕の下半身は完全に目覚めた。
思考回路を下半身に乗っ取られた僕のシュミレーションは役立たずになった。
祥子さんの唇を強く吸い、口のなかをめちゃくちゃにかきまわす。
力任せに抱きしめた身体に、下半身を押しつけた。
「ん……っ……」
鼻から洩れる祥子さんの甘い声を聞いた僕の身体は暴走し始めていた。
もう、僕自身にも止められない。
誰にも止められないと思っていたのに、祥子さんが僕を止めたんだ。
「あっ!」
僕は、思わず声を出していた。
祥子さんの、唾液で濡れて光った唇が言葉を発する。
「すっごい、硬くなってるね」
祥子さんがまた、淫らに微笑んだ。
「手、放してください」
「どうしてぇ?」
どうしてもこうしてもなかった。
男の武器であり最大の弱みでもある場所を握られてしまっては、どうしようもない。
「や、やめて、くださいよぉ」
身を捩って、掴まれた手から逃れようとする僕を見て、祥子さんが笑う。
「うふっ……」
「笑いごとじゃないですってば!」
「こんなになってちゃ、電車に乗れないね」
「誰のせいですか!」
「責任とってあげよっか?」
シュミレーションしたことのない事態に陥った僕は、祥子さんにすべてを任せるしかなかった。
ズボンの上から掴まれただけでも、どうにかなりそうなくらい刺激が強かったのに、祥子さんの手がファスナーを下げた。
「ブリーフなんだ」
「ボクサーブリーフです」
「へえ、そういうのがあるの?」
和之兄さんはトランクスなのかなあ。
僕の脳が、警告を発した。
祥子さんは、和之兄さんの奥さんだぞ。これ以上なにもするな。今ならまだ引き返せる。
警告は、僕の下半身にまでは届かなかったらしい。
「こんなとこにボタンついてるんだ?」
不思議そうに顔を近づけてきた祥子さんの息が、僕の腹にかかる。
公園内は、外灯がついていて、けっこう明るかった。
誰かに見られるんじゃないかとあたりを見回した僕は、驚いて息を呑んだ。
さっきまで、肩を抱き合ったりキスをしていただけのカップルたちは、みんなもっと過激な行動に移っていた。
ほとんど裸に近い姿になっている女の胸を背後に座った男が揉みしだいている。
膝に女を座らせた男の足元に、くしゃくしゃになったズボンが落ちているのを発見して、ドキッとする。
男が腰を揺するたびに、膝の上の女はのけぞっている。
その隣のベンチには誰も座ってなかった。
芝生の上に、もぞもぞ動く塊がある。
絡まりあった男と女は、正常位でセックスしている。
スカートが捲くれ上がり、あらわになった太腿がやけに白い。
「もうっ! ボタンがめんどくさいっ!」
いきなりボクサーブリーフを下げられて、僕の分身がぶるんと震えて外気に晒される。
「ふーん、ちゃんとオトナなんだあ」
「あ、あたりまえですっ!」
「ふふっ……かぁわい」
矛盾したことを言って祥子さんが僕の分身をじかに掴む。
自分以外の人の手に初めて触られた僕の分身は、武者震いのようにぶるっと震えてますます上を向いた。
これから、祥子さんの手でこすられてイカせてもらえるんだあ。
和之兄さん、ごめんなさい。
「うわぁ! な、な、な、なにすん……」
いきなりの奇襲攻撃に僕は早くも撃沈しそうになる。
祥子さんに咥えられた僕の分身は、ビクビクと脈打っていた。祥子さんの口のなかで。
見下ろす僕の目の前で、祥子さんが僕の分身から口を離す。
「んー、おいしい」
根元と真ん中を掴んだ祥子さんが、舌先で先っぽを舐める。
僕を見上げる祥子さんの顔は、みたこともないくらいすっごくいやらしかった。
「飲んでもいい?」
「えっ、なにを?」
「飲みたいの、口のなかに出してね」
「そ、そんなぁ……」
うろたえる僕に妖しい笑顔をみせてから、祥子さんはふたたび僕の分身を口に入れた。
「あっ……」
一気に深く咥えられた僕は、それだけでイキそうになり必死でこらえた。
吸い上げながら、祥子さんの唇が僕の分身を吐きだしていく。
先っぽを、キュッと強く吸われる。
「あっ!」
ゆっくり呑みこまれていく感覚に、背中がぞくりとした。
上あごの内側のざらざらしたところで、何度もこすられる。
ノドの奥にぐいっと吸い込まれ、先っぽがなにかに当たったと思った次の瞬間、僕は見事に祥子さんの口のなかに放っていた。
「ああぁーっ! しょ、祥子さん、ご、ごめんなさい」
顔を上げた祥子さんが、赤い舌で唇を舐めた。
本当に、飲んじゃったんだ……。
「うふっ、おいしかったよ」
祥子さんの濡れた唇からのぞく赤い舌が、小さな生き物のようにチロチロと動く。
何事もなかったように、僕の隣に座った祥子さんの手を握る。
唇をみつめていると、祥子さんが目を閉じた。
3回目のキスは、ちょっとイヤな味がしたけど、祥子さんは僕を離してくれない。
それどころか、キスをしながら僕の手首を握り、その手をスカートのなかに導いたのだ。
オンナごころと少年と(2)
作:桃沢りく
2
僕の手が、祥子さんの太腿にかかり、なめらかな肌をそっと撫でながら上に昇っていく。
ストッキングを穿いてない脚は、しっとりと温かい。
この人は、いとこの和之兄さんの奥さんなんだ。だから、こんなことをしちゃあいけないんだ。
必死で、そう考えようとするんだけど、僕の理性は、またもや下半身の欲求に負けてしまった。
「なにを遠慮してるの? もっと奥まできていいのよ」
「はい……」
でも、これ以上手を伸ばしたら、脚の付け根に届いちゃうよ。それでもいいの、祥子さん?
公園のなかがけっこう薄暗いのと、祥子さんが僕の上半身を抱きしめているせいで、手のほうはまったくの手探り状態だ。
ふいに指先が、布切れに触れる。
「あ……」
「いいのよ。触ってみて」
股間の薄い布は、熱く湿っていた。
布の上からこすってみたり押してみたり、2本の指でつまんでみたりしたけど、どこがどういうふうになっているのかさっぱり形がつかめない。
見たい。下着を脱がせて、明るいところで、そこをよく見てみたいと思った。
「祥子さん……」
「直接、触ってもいいのよ」
祥子さんは、僕にそこを、直接触ってもらいたいみたいだ。僕だって、触りたくないわけじゃないけど、それよりも見てみたいんだ。
とりあえず、パンティの隙間から指を入れてみる。
ぐちゅっ……。
いやらしい音が聞こえたような気がした。
僕の指に触れたものは、ぐにゃぐにゃに柔らかくて、形なんかないみたいだった。
熱く濡れている中心に指を進めると、ふいに指先が吸い込まれるような感覚がした。
「あっ……」
びっくりした僕は、反射的に手を引っ込めてしまった。
「いやなの?」
祥子さんの傷ついたような声に僕はあわてる。
「そうじゃないんです。あの、お願いがあるんですけど」
「なあに?」
「見せてください!」
「えっ?」
「今、触ったところを、見たいんです。ダメですか?」
祥子さんは困った顔をして、しばらく考えていた。
「いいけど、薄暗くてよく見えないよ?」
「それでも、いいんです」
僕には、考えてることがあるんだ。
ふわっとしたスカートを頭から被った僕は、ズボンのポケットから家の鍵を取り出した。キーホルダーに小さなライトがついていることを思い出したからだ。
米粒くらいに小さなボタンを押すと、ほんのりとライトが点灯した。これで、よし!
「どうしたの?」
「大丈夫ですから、じっとしててください」
なんだか変な会話を交わしながら、僕は小さな灯りを、祥子さんの股間に向けた。
ジャマなパンティを引き下ろして、片足を抜くと、祥子さんが股を大きく開く。
僕が、キーホルダーのライトを向けた場所に、ぼうっと女のアソコが浮かび上がってきた。
オレンジ色っぽいライトに照らされて、てらてらと光っているアソコをじっくり観察する。
こうなると僕は、この人が祥子さんという女性だってことも、和之兄さんの奥さんだということも、忘れてしまう。ただ僕の目の前に、女のアソコがある。それだけになってしまうんだ。
男って、こういうものなんだと、それはしかたのないことなんだと、思った。
指で、あちこち引っ張ってみたり、押したりこすったりしながら、じっとみつめる。
ぬめぬめした透明な液体が溢れてきて、僕の指に絡みつく。ぬめぬめのついたままの指で、アソコをいじり回す。
「ああ……っ……」
「祥子さん、どうしたの?」
「気持ちいいっ……今の……もっと、やって」
「これかなあ」
人差し指の腹を強く押しつけて、グリグリ回すと祥子さんが大きな声を出す。
「ああぁっ!」
突然、祥子さんはスカートをたくし上げて自分の指でソコに触れた。
「ここよ」
その場所は、僕の指が押さえているすぐ上だった。
「ここが、クリトリスなの、わかる?」
「うん」
ゴクンと唾を呑み込んだ音が祥子さんにも聞こえてしまっただろうか。
祥子さんの指が、クリトリスの上にかぶさっている皮をめくると、生々しい小さな肉の塊が現われる。
オレンジ色のほの暗い灯りに照らされているせいで、薄茶色の変な色をしてるけど、もっと明るいところで見たら、綺麗なピンク色なのかもしれない。
僕が頭を突っ込んでいるスカートの中は、初めて嗅ぐ女の肢体の匂いが充満している。
その匂いが、僕の脳を溶かそうとしている。
人間が動物だってことは小学生のときから知ってたけど、そのことを実感するのは初めてだった。
「優しく、触ってね」
「はい、祥子さん」
人差し指の先で、初めてクリトリスに触る。
女というのは、男とはまったく別の生き物なんだと、僕は思った。
オンナごころと少年と(3)
作:桃沢りく
3
女の肢体の中で、一番興味がある場所っていったら、やっぱりアソコかな。
僕だって、いつでもそんなことばかり考えてるわけじゃない。
普通に顔を見て好みだとかそうじゃないとか、キレイな髪だと思ったり、大きいオッパイとか、ついジッと見ちゃったり、もちろん服の上からだけど。そんなことは日常茶飯事だ。
でも、今みたいな状況下では、考えることなんて限られてしまう。
スカートの中に頭を突っ込んだ僕は、手に持った小さなライトのオレンジ色の光に照らされた女のアソコを見ている。
初めて本物を見た衝撃は少し薄れて、教えられたクリトリスに指先で触れてみた。
「ん……ふっ……」
祥子さんが息を吐くのが聞こえる。
不思議だ。
目の前のものは、ただ、女のアソコとしか思えないのに、この肢体は本当は祥子さんの肢体で、僕が指でいじっているのも祥子さんの一部なんだよね。
祥子さんは、いとこの和之兄さんの奥さんで、いつも明るくて元気で、僕よりはずっと年上だけど、子供のように無邪気なところのある女性だ。
僕は、いつからか祥子さんを好きになっていた。
そして、今日、こんなチャンスがやってきたのに、なんだか気持ちは複雑だ。
目の前のアソコが祥子さんのものだと思うと、気持ちが萎縮してしまう。和之兄さんの顔が頭に浮かんでしまうからかな。
だけど、僕が頭を突っ込んでいるスカートの中には雌の匂いが充満していて、アリンコほどの僕の理性なんてすぐに消し飛んだ。
祥子さんの指がクリトリスに被った皮をめくり上げて押さえている。
真珠玉のように丸くてつやつやしたクリトリスに触れていた指を、僕は離した。
そして、ギリギリまで顔を近づけて、舌先で舐めた。
「あっ……」
祥子さんは、僕がそこを舐めたことがわかったみたいだった。
閉じてしまわないように押さえている太腿の滑らかさや、鼻先に触れる硬い陰毛のくすぐったさが、やけにリアルに感じられる。
オンナごころと少年と(4)
作:桃沢りく
4
「すっかり、遅くなっちゃったね」
「祥子さん、駅から家まで、ひとりで大丈夫ですか?」
「なに言ってるのよ。平気、平気」
祥子さんの花柄のスカートがふわりと動いて、駅のホームに降り立つ。
僕の鼻先を、秘密の匂いが掠めたような気がする。
「またね」
笑顔で、小さく手を振る祥子さんをホームに残して、僕の乗った電車は再び走り始めた。
またね、か。
それはさあ、和之兄さんに勉強を教えてもらう日に、また会いましょう。っていうことだよね?
今日の、あの公園での出来事を、また今度……っていう意味じゃないんだよね。
祥子さんの、とっても普通な態度に、僕はうちのめされていた。
次の水曜日、いつものように和之兄さんの家に行く。
祥子さんと顔を合わせるのが、うしろめたいような恥ずかしいような、複雑な気持ちを僕は抱えていた。
それなのに、やっぱり祥子さんは、いつものとおりの祥子さんだった。
「ごめんねー、和之さんからさっき電話があって、今日は遅くなるから勉強は明日にしてくれって」
「ええっ、いまさら言われても、もう来ちゃったじゃないですか」
「うーん、だってえ、ほんとにさっき電話があったばっかりなんだもん」
僕は和之兄さんのマネをして、しかたがないなあ、という表情を作ってみせた。
「ぷっ……なに、その顔」
「なにって」
「子供がオシッコ我慢してるみたいな、情けない顔してるよ」
「お、おしっこ、じゃないです」
「なんで、そんなに赤くなってるの?」
からかわれてるってことはわかってたけど、僕は、そんなにイヤな気はしなかった。
「夕飯、食べて行ってよね」
「でも、和之兄さん、遅いんでしょう?」
「そうなのよ。せっかく作った三人分の食事がもったいないから、ちゃんと食べて帰ってね」
「はい、そうします」
トマトソースのロールキャベツは、ごく普通のロールキャベツだった。
祥子さんの料理にしては、これはとても珍しいことだ。
「おいしい?」
「はい、すごく普通においしいです」
「それ、どういう意味なの?」
「あ、いや、その……ひょっとして、キャベツのなかから思いがけないものが出てくるのかと思ったんだけど、普通にひき肉でした」
「ほんっとは、なにが言いたいのかなあ」
「その、えっと、つまりぃ、おいしいってことです」
祥子さんとふたりきりの食卓で、緊張してる僕は、なんとか緊張を隠そうとしていた。
「ごちそうさまでした。それじゃあ、帰ります」
「食べたらすぐに帰るなんて、失礼よ」
「でも……」
このまま、いつまでもふたりきりでいることには耐えられないよ、祥子さん。
先週の、あの公園でのこと、忘れたわけじゃないんでしょう?
僕は、毎日思い出しては、ひとりで……。
「和之さん、帰りが遅くなるって言ったでしょ」
ど、どういう意味ですか?
「続き、しよ」
「つ、つ、つづきって……」
祥子さんの手に引っ張られて、ダイニングの椅子から立ち上がる。
引かれるままに、リビングのソファに移動して並んで座った僕と祥子さん。
祥子さんの手は、僕の腿に置かれ、潤んだ瞳が僕の目をみつめる。
「しょ、祥子さん、待ってください」
「なに?」
「僕、こ、こんなの、困ります」
「男らしくないわねえ、別になんにも困らないよ」
「だって、祥子さんは和之兄さんの奥さんで」
「それが、なに?」
なに? って正面切って言われてしまうと僕はなにも言い返せなくなってしまう。
本当は、僕は、祥子さんとこの前の続きをしたいと思っているんだ。
今日は、ジーンズを穿いている祥子さんのヒップは、腰骨が横に張り出してボリュームたっぷりだ。
ピチピチの太腿と、股に食い込んでいる縫い目のあたりをジッと見る。
このブルージーンズの下に、アソコが隠れてるんだよね。
夜の公園で、小さなライトで照らして見た初めての女のアソコ。
今夜、リビングの灯りの下でみたら、どんな色をしてるんだろう?
想像してたような、綺麗なピンク色かな。それとも、もっと、いやらしい色をしてるの?
知りたい。今すぐ、見たいよ。
「どうしたの? 脱がせていいのよ」
「ごっくん」
口のなかに溢れてきた唾液を飲み込んで、僕は祥子さんを抱きしめた。
びっくりしたように、大きな瞳を見開いて僕をみつめる祥子さんの、口紅を塗ってない唇に自分の唇を近づける。
逃げないで、祥子さん。
唇が触れると、祥子さんが目を閉じた。
僕は、初めて触れた女の人の唇の柔らかさに感動した。
祥子さんの舌が僕の口のなかに入ってくる。
キスはこういうふうにするものなんだよ。そう言ってるみたいに祥子さんの舌が動く。
甘い舌が、僕の脳みそをトロトロに蕩けさせた。
「ここ、硬くなってるよ」
「しょ、祥子さん!」
「うふっ、かわいいね」
祥子さんは、キスをしながらすごく器用に僕のジーンズのファスナーを下げた。
ボクサーブリーフの上から握られる。
「ふふ、すっごい硬いね」
「こんなことされたら、硬くなってあたりまえです」
「言うじゃない。ねえ、もっと硬くできるの?」
「そ、そんなこと、わかんないですよ」
「じゃあ、試してみよ」
ジーンズとボクサーブリーフを一緒に膝まで引き下ろされた僕を、ソファから立ち上がった祥子さんが見下ろしている。
僕の足元に跪いた祥子さんの手が、僕のペニスを捕らえ、ゆっくり上下に動かした。
「うふっ、いい感じ。もっと、よくしてあげる」
「なっ……」
さっき僕の唇と触れ合った祥子さんの唇が、僕の勃起しかけたペニスを咥える。
予想はしてたけど、やっぱり、フェラの威力はすごい。
「あぁ……」
「ふふ、かわいいっ」
口でイかせてもらえると思っていた僕は、祥子さんが離れてしまったのでちょっとがっかりした。
その僕の目の前で祥子さんは、服を脱いだんだ。
ピチピチのジーンズも、Tシャツも、ブラジャーも。それから、清楚な白いレース付きのパンティも、全部、自分で脱いでしまった。
「触ってみて」
祥子さんに導かれた僕の指が、繁みを掻き分けてアソコに触る。
軽く触れただけで開いた二枚貝は、その裂け目からトロリとした蜜液を溢れさせていた。
「指が、濡れちゃったよ」
「もっと、濡らしてあげる」
祥子さんが僕の指を奥に誘い込もうとしてたけど、僕は指を離して祥子さんの顔を見た。
「公園は暗かったんだ。明るいところでよく見せて」
「なに、言ってるの」
恥ずかしそうに視線を逸らせた祥子さんは、僕が太腿に手をかけて開かせると、そのままの姿勢でいてくれた。
ソファに仰向けに寝ている祥子さんの脚を大きく開かせて、繁みを掻き分け、指でいじりながらじっくり観察する。
「やっぱり、綺麗な色してたね」
「やだ、恥ずかしいこと言わないでよ」
「恥ずかしくなんかないよ。祥子さんのここ、すごく綺麗なんだね」
「他の女のなんか見たことないくせに、生意気だぞ」
祥子さんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
僕よりずっと年上の女の人で、大人だって思ってたけど、こんなふうにするときは、とってもかわいくなるんだってこと、初めて知ったよ。
蜜液が溢れている場所に指を一本入れてみる。
グニグニ蠢いて、僕の指を飲み込んでいく。
左手で包皮をめくって露出させた薄ピンク色のクリトリスを舌先で舐めながら、僕は中に入れた指を動かしてみた。
「あっ、ああっ、あぁん、いいっ!」
祥子さんの両脚が閉じてきて、僕の頭を挟み込む。
クリトリスを舐めるたびに、祥子さんの中が蠢いて僕は指先から受ける快感だけで、ズキズキするほど硬くなってしまった。
「もっ、入れて」
「えっ、いいの?」
「お願いだから、ちょうだい。このままだと、おかしくなっちゃう」
童貞を捨てる瞬間、他の人はなにを考えたんだろう。
僕は、僕の頭の中は、もうなにも考えることなんかできなかった。
ペニスをアソコに入れる。それだけだ。
考えているんじゃなくて、きっと、これは男の本能なんだ。
祥子さんが自分の脚を抱えて開く。
入りやすい角度にしてもらったのに、僕はなかなかうまく挿入することができなかった。
「ここに、寝て」
祥子さんは優しく僕をソファに寝かせると、僕の腰を跨いだ。
両手でペニスを掴まれて、ゆっくり挿入させられる。
量感のある女の肢体が、僕の上で悩ましく身をくねらせながら上下に動く。
温かくて、気持ちのいい女の肉が僕のペニスを包んでいる。
擦られたり、締めつけられたりするたびに、オナニーでは味わったことのない、強烈な快感が僕の体を駆け巡った。
「気持ち、いいでしょ」
「祥子さん、ちょっと待って、やめてください」
「どうして?」
僕の意外な反応に驚いている祥子さんをソファに横たわらせる。
「僕が、祥子さんを気持ちよくしてあげたいんだ」
「童貞のくせに、生意気よ」
そう言った祥子さんの頬は、赤くなっていた。
これ以上は無理ってくらいに脚を広げた祥子さんのアソコを指で確かめる。
「まだ、濡れてるんだね」
「あたりまえでしょ」
ちょっと怒った口調で言い返してくるのは照れてるせい?
祥子さん、かわいいよ。
硬くなったペニスの先端をアソコに押しつけると、自然と先のほうが入っていく。
少し入れたところで止まってしまったので、祥子さんの顔をみると、薄っすら笑みを浮かべた妖艶な表情で僕を求めている。
「もう少し、上のほうから」
「このくらい?」
「あっ……」
やっぱり祥子さんの導きが必要だったけど、僕のペニスはすっかり祥子さんの中に埋没した。
何度か、動かすと、アソコが強烈に僕のペニスを締めつけてくる。
「だめだよ、祥子さん、そんなにされたら、我慢できなくなるよ」
「我慢しなくていいから」
「だって、そんなの、だめだよ」
「心配しないで、今日は大丈夫なの」
「本当に?」
「ねえ、もっと、して」
「祥子さん」
祥子さんが、僕の下でかわいい声を上げた。
「あぁん……あっ、あっ、やん……もっ……」
「祥子さんっ! ごめんなさいっ!」
あんまり気持ちよかったから、僕はあっというまに祥子さんの中に射精してしまったんだ。
「ごめんなさい」
「いいの、初めてだったんだもんね」
祥子さんが、僕の頭を優しく撫でている。
僕は、祥子さんの胸に顔を伏せていた。
「祥子さん」
「なあに?」
「まだ終わりじゃないよ。これから祥子さんを気持ちよくしてあげる」
「うふっ、本当?」
もちろん、ウソなんかつかないよ。
だって、僕のペニスはまだまだ元気一杯なんだから。
和之兄さん、ごめんなさい。
だけどさ。
祥子さんが、こんなに喜んでるんだから、いいよね。
そうそう、今夜のロールキャベツは最高においしかったよ。
和之兄さんの分は取ってあるから、明日食べなよ。
「あっ、ああっ、いいっ……ああぁっ、やぁん……もっとぉ……」
祥子さんと、祥子さんの料理は似てると思うんだ。
なにが出てくるかわからなくて、わくわくどきどきさせてくれる。
そして、意外なことに食べるととってもおいしいんだ。
オンナごころと少年と 完
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